社会保険料の計算ツールを使っても、「どの料率を入れればいいのか」「月給からどれくらい引かれるのか」が分からないと、結果が合っているか不安になります。
結論からいうと、会社員の社会保険料は健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険に分けて概算すると整理しやすくなります。ただし、標準報酬月額、勤務地、加入している健康保険、年齢、事業区分、賞与の有無で金額は変わります。
この記事では、日本年金機構、協会けんぽ、厚生労働省の公式情報をもとに、計算ツール代わりに使える概算手順と、転職前に求人票で確認したい給与条件を整理します。
- 月給から社会保険料を概算する順番が分かる
- 健康保険料、厚生年金、介護保険、雇用保険の違いが分かる
- 40歳以降や転職後に控除額が変わる理由を確認できる
- 求人票の額面を手取り目線で見直せる
参照ポイント
この記事の概算条件
健康保険料は協会けんぽ東京支部の2026年度料率、厚生年金は日本年金機構・厚生労働省が案内する18.3%の労使折半、雇用保険は厚生労働省の2026年度料率を参照しています。
実際の保険料は、勤務先の健康保険、都道府県、標準報酬月額、賞与、端数処理で変わるため、最終確認は給与明細と公式表で行ってください。
社会保険料の計算は4つに分けると分かりやすい
社会保険料と聞くと一つの控除に見えますが、給与明細では複数の項目に分かれます。まず、どの項目が給与から引かれるのかを確認しましょう。
| 項目 | 主な対象 | 計算で見るポイント |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 会社の健康保険に加入する人 | 都道府県や健康保険組合ごとの料率、標準報酬月額 |
| 厚生年金保険料 | 厚生年金に加入する会社員など | 標準報酬月額、18.3%の労使折半 |
| 介護保険料 | 40歳以上65歳未満の健康保険加入者 | 健康保険料に加えて介護保険料率を確認 |
| 雇用保険料 | 雇用保険の被保険者 | 事業区分ごとの労働者負担率 |
所得税や住民税も給与から引かれますが、この記事では社会保険料に絞って説明します。手取り全体を知りたい場合は、社会保険料を出したあとに所得税と住民税も確認します。
健康保険料
健康保険料は、加入している健康保険によって料率が変わります。協会けんぽの場合は都道府県単位で料率が決まり、2026年度の東京支部は健康保険料率9.85%と案内されています。
会社員の場合、健康保険料は原則として会社と本人で負担します。概算では、標準報酬月額 × 健康保険料率 ÷ 2で本人負担を見ます。
厚生年金保険料
厚生年金保険料は、標準報酬月額に保険料率をかけて計算します。厚生労働省は、厚生年金保険料率を18.3%とし、事業主と被保険者が半分ずつ負担すると説明しています。
概算では、標準報酬月額 × 18.3% ÷ 2で本人負担を見ます。本人負担率に直すと、おおむね9.15%です。
介護保険料
40歳以上65歳未満の人は、健康保険料に加えて介護保険料も給与から引かれます。協会けんぽ東京支部の2026年度案内では、介護保険料率は全国一律1.62%とされています。
本人負担の概算は、標準報酬月額 × 介護保険料率 ÷ 2です。40歳を迎える前後で給与明細の控除額が変わることがあるため、年齢による違いも確認しましょう。
雇用保険料
雇用保険料は、健康保険や厚生年金のような標準報酬月額ではなく、賃金に料率をかけて計算します。厚生労働省の2026年度案内では、一般の事業の労働者負担は5/1,000です。
概算では、月給30万円なら雇用保険料は30万円 × 5/1,000 = 1,500円です。農林水産・清酒製造の事業や建設の事業では料率が異なるため、勤務先の事業区分も確認します。
転職Tips
「社会保険料はだいたい15%」で終わらせない
手取りの概算では「社会保険料は額面の約15%前後」と説明されることがありますが、実際は年齢、健康保険、勤務地、標準報酬月額で変わります。
求人票を比べるときは、月給総額だけでなく、加入する健康保険、賞与、通勤手当、固定残業代の扱いも確認しましょう。
生活費を組む前に、額面ではなく控除後の手取りで比較することが大切です。
社会保険料の計算ツール代わりに使える概算手順
ここでは、月給から社会保険料を概算する順番を整理します。実務の給与計算とは異なりますが、転職前に「毎月どれくらい引かれそうか」を見るには十分な目安になります。
1. 月給から標準報酬月額を確認する
日本年金機構は、基本給に役付手当、通勤手当、残業手当などを加えた1カ月の総支給額を報酬月額と説明しています。この報酬月額を等級に分けたものが標準報酬月額です。
計算ツールに月給を入れる場合でも、厳密には月給そのものではなく、該当する標準報酬月額の等級を使う点に注意しましょう。給与明細では「標準報酬月額」や保険料額表に近い金額を確認できます。
2. 健康保険と厚生年金を計算する
標準報酬月額が分かったら、健康保険料と厚生年金保険料を見ます。協会けんぽ東京支部、40歳未満、標準報酬月額30万円に近い人なら、健康保険の本人負担は30万円 × 9.85% ÷ 2で約14,775円です。
厚生年金の本人負担は、30万円 × 18.3% ÷ 2で約27,450円です。40歳以上65歳未満の場合は、介護保険料として30万円 × 1.62% ÷ 2で約2,430円も加わります。
3. 雇用保険料を加える
最後に雇用保険料を加えます。一般の事業で労働者負担5/1,000なら、月給30万円の場合は約1,500円です。
ここまでを足すと、協会けんぽ東京支部・一般の事業・40歳未満・月給30万円に近い条件では、社会保険料の本人負担は概算で約43,725円です。40歳以上65歳未満なら、介護保険料を加えて約46,155円が目安になります。
テンプレート
社会保険料の概算メモ
標準報酬月額:月給、通勤手当、残業手当などを含めて確認
健康保険料:標準報酬月額 × 健康保険料率 ÷ 2
厚生年金:標準報酬月額 × 18.3% ÷ 2
介護保険料:40歳以上65歳未満なら標準報酬月額 × 介護保険料率 ÷ 2
雇用保険料:賃金 × 労働者負担率
社会保険料合計:上記を合計して、所得税・住民税を引く前の控除目安にする
月給別の社会保険料目安
次の表は、協会けんぽ東京支部の2026年度料率、厚生年金18.3%、雇用保険の一般の事業5/1,000を使った簡易目安です。標準報酬月額の等級や端数処理を厳密に反映したものではありません。
| 月給目安 | 40歳未満の社会保険料目安 | 40歳以上65歳未満の社会保険料目安 | 見方 |
|---|---|---|---|
| 20万円 | 約29,150円 | 約30,770円 | 健康保険、厚生年金、雇用保険の合計目安 |
| 25万円 | 約36,438円 | 約38,463円 | 40歳以上は介護保険料分が増える |
| 30万円 | 約43,725円 | 約46,155円 | 求人票の月給30万円がそのまま手取りになるわけではない |
| 35万円 | 約51,013円 | 約53,848円 | 残業代や通勤手当で標準報酬月額が上がる場合がある |
| 40万円 | 約58,300円 | 約61,540円 | 所得税・住民税は別に差し引かれる |
この表で分かるのは、社会保険料だけでも月給のかなりの割合を占めるということです。さらに所得税、住民税、会社独自の控除があるため、実際の手取りはここからもう少し下がります。
給与条件を見直したい、月給と手取りの差を相談したい場合は、希望手取りから逆算して求人条件を整理しておくと比較しやすくなります。
計算ツールの結果がずれる主な理由
社会保険料の計算ツールで出した金額と給与明細の金額が違うことは珍しくありません。多くの場合、入力条件や計算対象がそろっていないことが原因です。
健康保険の種類と勤務地が違う
協会けんぽは都道府県ごとに健康保険料率が異なります。また、会社が健康保険組合に加入している場合は、その組合の料率を使います。
東京都の協会けんぽ料率で計算した結果を、別の都道府県や健康保険組合の給与明細と比べると差が出ます。計算ツールでは、勤務先の健康保険に合う料率を選ぶことが重要です。
標準報酬月額と実際の月給が一致しない
健康保険料と厚生年金保険料は、月給そのものではなく標準報酬月額を使います。標準報酬月額は、資格取得時、毎年の定時決定、昇給・降給などによる随時改定で変わります。
たとえば、今月だけ残業代が多かったとしても、すぐに保険料が同じだけ増えるとは限りません。反対に、4月から6月の報酬が高いと、9月以降の標準報酬月額に影響することがあります。
賞与や転職直後の扱いが違う
賞与にも社会保険料はかかりますが、毎月の給与とは計算の見方が異なります。年収から社会保険料をざっくり見る場合でも、月給と賞与を分けて考えるほうがズレを減らせます。
また、転職直後は前職の住民税、入社月の社会保険加入タイミング、会社独自の控除などで手取りが変わります。初回給与だけで年収全体を判断しないようにしましょう。
転職裏情報
額面年収アップでも手取り差は小さく見えることがある
年収が上がると、社会保険料や税金も増えるため、額面の増加分がそのまま手取りに反映されるわけではありません。
特に賞与比率が高い会社、固定残業代込みの給与、手当が多い求人では、月々の手取りが想像と違うことがあります。
転職先を比較するときは、年収総額、月給、賞与、固定残業代、社会保険料をセットで見ると判断しやすくなります。
転職時は社会保険料込みで手取りを確認する
社会保険料の計算は、転職時の給与比較にも役立ちます。求人票の月給や年収が高く見えても、手取り、賞与、残業代、手当、勤務地、加入保険まで見ないと、生活に使える金額は判断できません。
| 確認項目 | 見る理由 | 求人票・面談での確認例 |
|---|---|---|
| 基本給 | 賞与や残業代の基礎になることがある | 月給総額のうち基本給はいくらか |
| 固定残業代 | 月給総額が高く見える要因になる | 何時間分が含まれ、超過分は支払われるか |
| 通勤手当 | 社会保険の報酬に含まれることがある | 上限額、支給方法、実費との差額 |
| 加入する健康保険 | 健康保険料率が変わる | 協会けんぽか健康保険組合か |
| 賞与 | 年収と月々の手取りの見え方が変わる | 支給実績、評価連動、入社初年度の扱い |
社会保険料は避けられない控除ですが、仕組みを知っておくと求人票の見方が変わります。希望年収ではなく希望手取りから逆算すると、転職後の生活設計に合う条件を選びやすくなります。
まとめ:社会保険料は公式料率と給与条件をセットで確認しよう
社会保険料の計算ツールを使うときは、健康保険、厚生年金、介護保険、雇用保険を分けて入力・確認することが大切です。健康保険は加入先と都道府県、厚生年金は標準報酬月額、雇用保険は事業区分で変わります。
月給30万円の例では、協会けんぽ東京支部・40歳未満・一般の事業という条件で、社会保険料の本人負担は概算約43,725円です。ただし、これは所得税や住民税を引く前の金額であり、実際の手取りはさらに個別条件で変わります。
求人票の額面を見て不安がある場合は、社会保険料と税金を引いた後の手取り、賞与、固定残業代、通勤手当まで整理してから比較しましょう。給与条件を一人で判断しにくいときは、FiiTJOBのLINE相談で希望手取りに合う働き方を確認してみてください。