鍼灸師は鍼と灸を用いて全身のツボや筋肉にアプローチして、病気の予防改善や健康回復をはかる医療技術をもつ専門家です。鍼灸師はエステサロン、スポーツクラブ、介護施設などさまざまなフィールドで活躍できる職業でもあります。
「美容鍼灸からスポーツ鍼灸へと専門分野を変えたい」「もっと条件のよいところで働きたい」など、転職を考えている方も多いようです。また、幅広い業種で活躍できて東洋医学の専門知識も身につけられるので、ゼロから鍼灸師を目指して転職活動をしている人もいます。
そこで大切なのが「転職に有利なコツを踏まえて転職活動を進めていくこと」です。特に履歴書の自己PR欄志望動機は「どれだけその会社で働きたいのか」をアピールできるとても大切な項目です。ここでライバルたちと差をつけられれば、転職活動も非常に有利にはたらきます。
そこで今回は、鍼灸師を目指している人必見の転職活動を有利にする3つのコツについて紹介します。その他、鍼灸師のやりがいや年収などについても解説していきます。ここでのテクニックを活かして、ぜひ転職活動に役立ててください。
鍼灸師とは
まず、今需要が高まっている鍼灸師について解説していきます。どのような職業でどんなやりがいを得られるのか、この章で確認してみましょう。
概要
鍼灸師は、鍼と灸を用いて全身のツボや筋肉に刺激を与えることで自然治癒力を高め、病気の改善予防を促進させる東洋医学のスペシャリストです。
鍼灸師は今注目を集めている職業でもあります。年々需要は増加しており、2020年度には全国の鍼灸師の数は18万人にも上りました。人々の健康志向が高まっていることもあり、これからもっと鍼灸師のニーズは増加していくでしょう。
魅力とやりがい
人助けの喜びが得られる
鍼灸師はみずからの手で患者さんを治療します。直接施術するため、患者さんの容態が良くなる経過を見られたり、直接感謝の言葉をもらったりする機会も多いです。このように、人を助ける喜びを実感できるのは鍼灸師最大の魅力ではないでしょうか。
幅広いフィールドで活躍できる
病院や鍼灸院だけでなく、さまざまなフィールドで活躍できるのも魅力のひとつです。エステサロンでの美容鍼灸や鍼灸院が併設されたジムでスポーツ鍼灸の施術を行うこともあります。また、福祉介護施設で高齢者へのケアをする機会も多いです。
世界に通用するスキルが手に入る
鍼灸は東洋医学を発端とする民間医療のひとつです。鍼灸医療は世界保健機関(WHO)でも認められており、アメリカやヨーロッパでは日本以上に鍼灸医療が進んでいます。
約2,000年にもおよぶ歴史のある東洋医学は現代社会にも通じる医学です。東洋医学を学ぶことで、鍼灸の知識はもちろん諸外国にも通用する医療スキルを手にすることができます。
年収
鍼灸師の月給は約18~30万円です。年収にすると350~450万円ほどで、勤務先や働き方によって収入は大きく変動します。年齢による差がなく、若手でも実力があればそれに応じた報酬が期待できます。
病院などのスタッフで働く場合の年収は300~400万円で、給与形態は固定給と歩合制のどちらかを導入する医院が多いです。独立した場合、中には700~1,000万円も稼ぐ人もいます。
柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師など、ほかの医療系資格の職業とも比較しても年収にあまり大差はないです。しかし、上述のように経験や技術力さえあれば収入アップが期待できる職業でもあります。
鍼灸師になる方法
鍼灸師をゼロから目指す場合、はり師ときゅう師あわせて2つの国家資格を取得しなければなりません。まずは日本医専などの鍼灸系専門学校や鍼灸学科がある4年制大学、または3年制の短大の卒業が必須です。
下記は試験科目の一部です。
- 医療概論
- 解剖学
- 生理学
- 臨床医学論
- 東洋医学概論
- はり理論
国家試験は150点満点中90点以上で合格です。合格率はその年によって変動はありますが、毎年およそ7割の受験者が合格しています。在学中にしっかりと準備すれば、十分合格を狙える難易度です。
鍼灸師への転職活動を有利にする3つのコツ
鍼灸師は今注目を集める職業のため、競争率も年々高まっています。転職活動を成功させるためには、自分をどれだけアピールできるかがカギです。
今回は、履歴書の書き方に関するコツを3つ紹介します。ここでのコツを活かして履歴書を書くことで、転職を有利に進められるはずです。難しい内容ではないので、ひとつずつ丁寧にこなしていきましょう。
①自分のやりたいことを具体的にする
自分がその鍼灸院に就職したときに何がしたいかを具体的に説明しましょう。自分が今までに習得した技術を使って、転職先でその技術をどう活かしていくかについて述べるようにします。
「エステサロンでの勤務経験があるので、そこで得た知識や接客スキルを美容鍼灸の現場で活かしたいです」
「かつてテニスで肘を痛めた時に鍼灸医療にお世話になりました。そこで、私もスポーツ鍼灸に携わって多くのアスリートの助けになりたいと思いました」
このように、どのようなビジョンをもって働くかが明確になっているとよいです。
②人間性がわかる表現をする
鍼灸師でもっとも大切なのはその人の「人間性」です。患者さんを自分の手で直接診察、治療をするので、患者さんとの距離が非常に近い職業です。そのため「誰にでも親切丁寧に優しく接する」ことができる人間性を表現する必要があります。
「いつも指名してくれる患者さんがいる」「お礼の手紙をもらったことがある」「人と話すことが好き」など、コミュニケーションが上手なエピソードを交えてアピールするとよいでしょう。
③ほかの職場との差別化をする
ほかの職場との差別化をする一文を添えるようにしましょう。つまり「その職場でしかできない経験があること」をしっかりとアピールすることが必要です。
たとえば、スポーツ鍼灸に特化している医院であれば「多くのアスリートのヘルスケアに携わり、スポーツ医療の知見を深められるから」と表現します。また、医院のHPや求人をチェックして「〇〇病院でしか経験できない施術について学びたいから」と加えるのもおすすめです。
こうすることで、その人が「この場所でしかできない経験を積みたい」という意思をアピールできます。
鍼灸師の転職先の探し方
鍼灸師は求人数が少ないのでなかなか探しづらいかもしれません。今から紹介するこちらの方法を使えば、より簡単に鍼灸師の求人広告を探しやすくなります。転職活動の際はぜひ活用してみてください。
求人票
鍼灸師の専門学校や養成施設には、さまざまな病院や鍼灸院からの「求人票」が届きます。専門学校の場合、その学校があるエリアからの求人がほとんどです。
求人票自体は通年届きますが、秋の採用活動の時期になるとより求人数も増えてきます。
求人票は学校の教員のチェックが入ってから掲載されるので、求人内容の詳細を教員に直接聞けるというメリットがあります。教員への積極的な相談によって、より自分にマッチした転職先への就職も可能です。
OB、OGからの紹介
学校のOBやOGによる紹介で鍼灸院へ転職できるケースもあります。そのためには、専門学校や大学のOB、OGとできるだけ接点をもつようにしておくとよいでしょう。こういった機会があれば、より多くの病院や企業と関わる機会が増えます。
医療系の転職サイト
一般の転職サイトではなく、医療系に特化した転職サイトを利用するのがおすすめです。鍼灸師の求人数も多く、エージェントが非公開の求人を紹介してくれることもあります。エージェントに相談することで、勤務地や収入など自分の希望にあった条件の求人が見つけやすくなります。
医療雑誌
専門学校の図書館に所蔵してある雑誌の巻末に、鍼灸師の求人情報が掲載されていることがあります。医療雑誌に掲載されている求人は大手の企業のケースが多いです。問い合わせも多いので、気になる求人はなるべく早めに応募しましょう。
鍼灸師の給料を上げる方法
転職を考えているということは、今の収入に納得していない人も多いのではないのでしょうか。ここでは、鍼灸師が転職で給料を上げる方法について解説していきます。
ほかの資格を取得する
柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師といった、ほかの医療系資格の取得がおすすめです。資格手当がある職場の場合、収入アップが期待できます。また、鍼灸以外の施術ができるという強みもできるので、給料交渉の際に有利にはたらきます。
チェーン店の院長になる
全国展開している鍼灸院の院長になることで、給料を上げることも可能です。なかに月給20~50万以上で求人を出しているところもあります。さらに、院長になるとインセンティブがつく鍼灸院もあるので、求人内容をしっかりチェックしておくとよいでしょう。
求人応募前にしておくべきこと
自己分析する
履歴書には志望動機や自己PRを記載する必要があります。印象に残る履歴書を書くためには、自己分析で今の自分を見つめなおすことが大切です。自己分析すると企業とのマッチングミスを防げ、なおかつ自分の意見に一貫性を持てるので積極的に分析しましょう。
以下の5段階に分けて行うとスムーズに自己分析できます。
- 転職して実現したいことの明確化
- 自分の性格についての分析
- 今までのキャリアとスキルの振り返り
- プライベートでの興味関心
- 自分の強みの言語化
転職して実現したいことの明確化
「なぜ転職したいのか?どんな仕事がしたいのか?」について考えるステージです。目指したいキャリアを明確にし、実現のためにどんな職業につくべきかについて考えましょう。自分の軸がよりぶれることなくはっきりするので、転職もスムーズに進められます。
自分の性格についての分析
ここでいう性格は、仕事上での自分の一面をさします。論理派か感覚派か、挑戦派か冷静派か、など、仕事に対する姿勢や考え方について振り返るための分析です。
今までのキャリアとスキルの振り返り
役職や立ち位置だけではなく、どんな仕事に取り組み、どんな成功体験・失敗体験をしたのかについても振り返ることが大切です。時系列順に書き起こし、自分のキャリアの変遷を客観視できるようにしましょう。
プライベートでの興味関心
仕事と無関係のように見えますが、プライベートの自分についても振り返ると新たな可能性が見つかることもあります。特に今までと異なる業界や職種を目指したい人は、自分の特性を見出すきっかけにもなるかもしれません。
自分の強みの言語化
自分についての振り返りを終えたら、次は具体的なエピソードを交えてアピールポイントを言語化します。自分の強みや特徴、それをあらわすエピソード、学びや成果について簡潔にまとめましょう。
HPや求人情報をチェックする
企業や鍼灸院の人事がどのような人物像を求めているかについて確認するのもおすすめです。求人情報のなかには「求める人物像」が掲載されていることもあります。企業の情報収集をして、会社の雰囲気や方針を知っておくと入社後のギャップをなくすことができます。給与形態や労働環境なども、マッチングミスを防ぐためにここで確認しておきましょう。
面接時の逆質問を考えておく
面接の場で相手からの質問に答えられることはもちろん、こちらが聞く質問に関しても準備しておかなければいけません。逆質問を用意しておくことで、その職場で真剣に働きたいという意欲が伝わります。
あくまで、求人やHPを見ればわかるような内容は質問しないようにしましょう。その医院についてきちんとリサーチしていないという印象を与えてしまいます。
まとめ
世界的に健康志向が高まっている今、鍼灸師の需要は年々増加しています。その分競争率も高いくなっていますが、ほかと差をつけられる履歴書が書けるようになれば転職でも非常に有利です。
それには自分のアピールポイントや志望動機を簡潔にまとめて、面接官の印象に残りやすくする必要があります。また、あらかじめ企業情報のチェックや自己分析をすることで、マッチングミスすることなく転職が成功するでしょう。
今回紹介した方法を参考に履歴書作成を進めれば、軸のぶれない転職活動ができるようになります。鍼灸師はやりがいと魅力の多い職業なので、これを機にぜひ鍼灸師を目指してみてはいかがでしょうか。