理学療法士の資格を徹底解説！資格の活かし方も説明

はじめに

近年、有資格者が増加している理学療法士。リハビリの先生ということは何となくわかりますが、実際はどうやって資格を取り、どこでどんな仕事をしているのか気になりますよね。

理学療法士になるためには、養成施設へ行き、国家試験に合格しなければなりません。資格取得後はほとんどの人が病院に就職しますが、実はそれ以外にも多くの場で活躍できます。

この記事では、理学療法士の資格そのものの説明と資格取得後の活かし方まで、網羅的にお話ししていきます。

１ 理学療法士の仕事内容と素質

理学療法士はリハビリテーションを行う職業で、いわゆる「リハビリの先生」です。

今でこそリハビリテーション、略してリハビリという言葉は誰もが知っていますが、リハビリテーションの正式な意味はご存じですか？

リハビリテーション（Rehabilitation）は、re（再び、戻す）とhabilis(適した、ふさわしい)から成り立つ言葉です。単純に機能回復訓練という意味ではなく、「自分らしい生き方、生活に戻る」という、大きな意味があります。その人が自分らしい生き方をしていくためには、多くの医療従事者、家族などが必要で、理学療法士はその一翼を担っています。

具体的な仕事内容は、病気や怪我、事故によって身体に障害や不自由がある人に対して運動療法や物理療法を用いることにより、回復をサポートすることです。ちなみに、運動療法や物理療法は医師の指示のもと行われます。

理学療法士が対象とする人は、身体に何らかの障害や不自由がある人なので、身体的な回復のサポートをするだけでなく、相手の立場になって、寄り添う心を持った人が向いていると言えるでしょう。

２ 理学療法士の人口と今後予想される動向

2021年時点での理学療法士の資格を保有しているのは約19万人で、2011年は約９万人であることから、約10年で倍の数になっています。

これほど増加した背景には、平成11年に理学療法士の養成施設に関する規制緩和や規制改革が決定されたことや、高齢化の進行によって介護予防を目的としたリハビリテーションが必要となったことが考えられます。

平成3１年の理学療法士、作業療法士需給分科会の発表によると、2040年頃には理学療法士の供給数が需要数の約1.5倍となるとの事で、飽和状態になる可能性がありますが、さらなる高齢化社会の加速により、飽和はしないとの意見もあります。

いずれにしても、質の高いリハビリテーションを提供するためには、資格取得後でも継続して知識や技術を向上をさせる必要があります。

３ 理学療法士の養成施設とそれぞれの違い

理学療法士になるためには国家試験に合格しなければなりません。国家試験とは、誰もが受けられるものではなく、そもそも国家試験を受けるための受験資格が必要です。受験資格を得るためには定められた期間、養成施設で勉強しなければなりません。

理学療法士の養成施設には四年制大学、短期大学、専門学校（四年制と三年制があり）があります。ここでは、四年制大学と三年制の専門学校を例にそれぞれの特徴や違いをお話ししていきます。

3－1 学位や称号

四年制大学を卒業すると「学士」、三年制の専門学校を卒業すると「専門士」の称号が得られます。この違いによって就職時に大きな差はつきませんが、大学院へ進学したい場合は「学士」の取得が必要となってきます。

3ー2 カリキュラム

四年制大学では「基礎科目」という一般教養を学ぶ科目があるのに対し、専門学校はその修学期間の短さからも、理学療法士としての専門的で実践的な知識や技術の勉強に特化しています。学生の間に専門科目以外の一般的な教養も勉強したいと考える人は大学を選択するのもひとつでしょう。

3ー3 学費

国公立大学か私立大学、地域によって差はありますが、おおまかには四年制私立大学：550万円～800万円、三年制の専門学校：350万円～500万円となっています。三年制の専門学校は期間の短さからも少し安い傾向にあります。

このような点が四年制大学と三年制の専門学校の特徴や違いです。自分が希望する学生生活によってどの養成施設に行くか決めるといいでしょう。

４ 理学療法士になるための勉強

四年制大学と三年制の専門学校についてお話しましたが、どちらにも共通しているのは「理学療法士の国家試験に合格すること」です。理学療法士になるためにはテキストなどで基礎的な医学の知識を身につける「座学」、実践を通して学ぶ「校内演習」、実際の医療の現場で学ぶ「実習」が必須です。

4ー1 座学

理学療法士の勉強には、解剖生理学、運動学、リハビリテーション医学といった一年次から学ぶ基礎的な科目から、内科学や整形外科学、神経内科学、精神医学といった専門分野の科目、さらには理学療法評価学や、運動療法や物理療法、動作分析といった現場で必要となる実践的な科目を学びます。

4ー2 校内演習

校内演習ではテキストで学んだ知識を実践するだけでなく、生徒同士が理学療法士役と患者役に分かれて演習することにより、リハビリを必要としている人の気持ちも同時に学ぶことができます。

4ー3 臨地実習

臨地実習は実際に病院で勤務している理学療法士、バイザーとよばれる実習指導者から学びます。実習に臨むには学内で勉強した知識や技術だけでなく、実際に病院でリハビリを受けている人と接するためのコミュニケーション力も必要です。また、バイザーとの関係性を築くことも必要なので、学生生活の中では大きな試練でもあります。

4ー4 国家試験

ここを突破しないと理学療法士の資格は取得できません。国家試験は入試とは違い、定員は無く、合格ラインを超えた人すべてが合格となります。問われる内容も三年ないし四年間の学校生活での学びをベースとされているので、きちんと勉強を積み重ねていれば、突破できます。

５ 資格取得後の道、活かし方

国家試験に合格すれば、理学療法士の資格が取得できます。

理学療法士の就職先は大半が病院ですが、それだけでなく実は色んな選択肢があり、さまざま分野で活躍することができます。

5ー1 病院

病院は理学療法士の就職先として最多です。

受傷直後や術後間もない急性期の人から、ある程度は安定している回復期の人まで、さまざまな過程にある人のリハビリを行います。

急性期から回復期、その後の療養までをひとつの病院でサポートすることもありますが、急性期病院、回復期病院、療養型病院というように、病院自体がそれぞれの役割に分かれていることも多いです。病気の種類や回復過程によってリハビリ内容も全く異なるため、新卒の理学療法士にとっては多くの経験が積める場です。

5ー2 介護老人保健施設

今後もますます高齢化が加速し、令和18（2036）年には3人に1人が65歳以上の高齢者になると予想されています。そんな中で、介護予防が重要課題とされており、介護予防のためには理学療法士の存在が必須です。介護現場でのリハビリは身体機能の回復というよりは維持が大きな目的とされています。認知症の人も対象とする機会が多いため、身体機能の評価だけでなく、認知機能の評価やそれらに基づいた治療を考える必要があるため、病院とは違った経験を積むことができます。

5ー3 スポーツの分野

スポーツ選手が故障した時、元通りのパフォーマンスを行えるようにサポートしたり、日ごろから怪我のしにくい身体の使い方も指導します。仕事としてスポーツをしている選手と関わるので、スランプに陥っている時期などは選手とのコミュニケーションに悩むこともありますが、熱い信頼関係が結べ、活躍が認められると、専属トレーナーとして契約することもあります。

5ー4 一般企業

理学療法士として、ハウスメーカーや医療、介護機器のメーカーで活躍することもできます。一見、一般企業とは無縁のように思いますが、身体の機能について熟知している理学療法士だからこその視点で仕事ができます。

たとえばハウスメーカーでいうと、段差の有無やその高さの設計など、身体に負担がかかりにくい住環境整備の面で携わることができます。

5ー5 他の資格との掛け合わせ

残念ながら日本では理学療法士の資格のみでは開業することはできません。しかし、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師の資格を持つことで開業することができ、大幅な収入アップも可能です。ここで注意が必要なのは、開業権をもつ資格として開業しているので、理学療法は提供できないという点です。

5ー6 フリーランス

フリーランスとは、会社などに所属せず、仕事に応じて自由に契約する人のことを言います。つまり、自分で仕事を探し、自分で仕事を取ってくる必要があります。

働き方としては、セミナーや講演会の実施、書籍の執筆などがあります。大きな仕事をつかめたら、かなりの収入アップがのぞめますが、そのためには自分を売り込んだりして、積極的に営業する必要があります。

まとめ

理学療法士の資格と、その資格の活かし方についてお話しました。

身体に障害や不自由がある人に対して、機能回復のためのサポートをするといった、とても素晴らしい仕事の理学療法士。その魅力に惹かれて目指す人も多いのではないでしょうか。

理学療法士になるためには、大学や専門学校で知識や技術を身に付け、実際の医療現場で実習をし、最後には国家試験を突破しなければなりません。

資格取得後も、就職先は病院や介護老人保健施設だけにとどまらず、スポーツ選手のサポートや一般企業など、実に多くの場で活躍できる可能性があります。

仕事とは、時に人とのつながりで大きな広がりを見せることがあるので、常にアンテナを張りめぐらせ、自分に合う働き方、資格の活かし方を見つけましょう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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