理学療法士は、日本の高齢社会においては需要が絶えない仕事であるというイメージがあります。しかし、日本の理学療法士養成校の増加により、新卒の理学療法士が毎年約1万人程度誕生するほど、理学療法士の資格を所有した人数は増えています。理学療法士の需要に対する供給量が過多になる時も来ることも考えられています。

理学療法士になるまでには養成校で3、4年の勉強や臨床実習を行い、国家試験に合格しなければなりません。理学療法士になるには、その分の学費や勉強時間が必要となります。苦労して取得した理学療法士の資格は将来は有効に活用していきたいところです。

今回はそんな理学療法士という職業の将来性と役割、また長期的に活躍するために必要なことについて解説していきます。

理学療法士の将来性と役割

理学療法士として働いていく上で、将来性や今後も長く仕事を続けていて役割があるのかということは、気になるところです。結論から言うと、理学療法士は需要・将来性は十分にある職業です。また、今後も高齢社会を支えるまたはその他の場面でも活躍できる職業であるとされています。

ここでは高齢化による需要と活躍場所が豊富であるという2つの視点から解説していきます。

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１　高齢化による需要

病院勤務や介護保険施設、老人ホームなど理学療法士は高齢者に対してリハビリテーションを実施することの多い職業です。高齢になるとどうしても様々な疾患を抱える人が増えてきます。生活習慣病をはじめとした諸疾患を患うことが多いのも、理学療法士が必要である理由です。疾患に罹患する人は悲しいことにゼロになることはありません。日本は高齢者が多い国としてもトップクラスであり、高齢者に対するリハビリテーションの需要はまだまだ減らないと考えられています。

科学技術は年々進歩を続けており、現在ある職業でもなくなる職業はいくつも出てくると言われています。また、理学療法士は数がどんどん増えていることから供給が過多になるのではないかとも言われています。

その中でも、理学療法士は今後もAIやテクノロジーに代替されにくい職業とも予測されており、理学療法士は今後も需要のある仕事ということが言えます。また、理学療法士は20年後でも需要があると予測されており、今後成長する職業としても上位に位置づけされています。しかし、理学療法士の数が増えていることは事実であるため、理学療法士として自己研鑽を行い、長く活躍し続けられるように努力していくことは必要です。

このように理学療法士は将来も高齢社会を支えていくという役割の担った職業です。

2　活躍場所が豊富

理学療法士といえば、病院や施設でリハビリテーションを実施しているというイメージが一般的です。しかし、理学療法士の活躍場所は幅広く、様々な場面で活躍する理学療法士も増えています。活躍場面によって理学療法士の役割は様々で、どんな働き方があるのかを一部紹介していきます。

病院勤務

理学療法士は病院や施設などでリハビリテーションをしているのが世間的なイメージとして認知されている働き方です。病院にも様々あり、病気を罹患してすぐの方が来る急性期病院、少し症状が落ち着いてリハビリテーションを重視して行っていく回復期病院、地方では地域の診療所などの働く場所があります。病院勤務の理学療法士は、患者様の身体機能や動作能力改善のためにリハビリテーションを実施することが主体となる業務です。リハビリテーションの他に、入院やリハビリテーションを実施するにあたって必要な書類の作成や他職種やご家族への説明などの業務を行うこともあります。

訪問リハビリテーション

訪問リハビリテーションでは、実際に患者様の自宅へ赴き、リハビリテーション業務を行います。病院勤務とは違い、実際に患者様の自宅でリハビリテーションを行うことができるため、身体機能の維持・向上以外にも、自宅の環境に合わせた動作の獲得や自宅環境の提案なども行うことができます。また、日常生活での工夫する点や介助方法などを家族に指導することもできます。

高齢者施設

高齢者施設は有料老人ホームや特別養護老人ホーム、老人保健施設、デイーサービス・デイケアセンターなどのことを指します。その業務内容としては、利用者様へのリハビリテーションの実施と病院勤務とやや類似しています。
しかし、高齢者施設のリハビリテーションでは1対1のリハビリテーションもありますが、集団でリハビリテーションを行うこともあります。また、リハビリテーションの実施時間はやや短かったりと制限もあるため、病院勤務ほど1人の患者様を長くじっくりリハビリテーションを実施できるというわけでもありません。また、入所期間などもその施設の形態で異なります。

小児施設

小児施設というのは、肢体不自由児や重症心身障害児施設、特別支援学校や放課後デイサービスなどの福祉施設です。小児施設では、生まれつき障がいを持っている子どもや心身に障がいがあると診断された子どもに対してリハビリテーションを行います。リハビリテーションの内容としては、発達の遅れに対して、能力を引き出せるように援助を行う、時には療育のように教育的な関わり方をすることもあります。

教育機関・研究機関での勤務

患者様や利用者様のリハビリテーションを行うだけでなく、大学で教育者として働く働き方もあります。大学を卒業し、国家試験を合格しただけでは、大学で教員としては働くことはできず、大学院に行く必要があります。大学院は、養成校を終了したのちに、大学院を受験し、「修士課程」や「博士課程」を取得することができます。その資格を持って、教員として働くことができるようになります。大学の教員として働きながら、医療に関わる研究も行います。

一般企業

理学療法士として、または理学療法士資格を生かして、一般企業で活躍するという働き方もあります。例を挙げると、福祉用具販売店、医療機器開発やアプリ開発、スポーツジムやパーソナルトレーナーなどがあります。
また、スポーツチームのトレーナーとして、アスリートのリハビリや身体のメンテナンスに関わることもあります。スポーツでケガをした際にリハビリを行ったり、日常のアスリートの身体作りや回復などに関与したりといった働き方もあります。しかし、スポーツチームの一員として活躍するため、大変な努力や経験が必要で、とても狭き門と言えます。

医療技術やIT技術が進歩している現代では、理学療法士の働き方の多様化も進んでいます。理学療法士の資格にこだわらずに、様々な働き方をする人が増えてきており、今後も益々多様化は進んでいくと考えられています。そのため、今までと同じような理学療法士の仕事と新しい働き方をする理学療法士の両方とも社会には必要な存在となることでしょう。

理学療法士として長く活躍するために

理学療法士は需要もあり、活躍場所も豊富な職業です。養成校に通って、勉強や臨床実習を行い、国家試験を合格して理学療法士として働いています。せっかく理学療法士と働いているならば、なるべく長く活躍したいものですが、長く活躍するためには他の理学療法士と違う価値を見出すことが必要です。将来性のある職業として、今後どのようなことをしていけばよいかを解説していきます。

負けない分野を作る

まずは、他の理学療法士に負けない分野を作るということです。理学療法士は需要はあるとはいっても、毎年1万人程度の新卒理学療法士が誕生するほど、職業人口は多くなっています。まわりと同じようなリハビリテーション業務を行っていては、どんどん埋もれていってしまいます。

そこで自分だけが特化した分野を作ることが必要です。自分の得意な疾患でもいいですし、自分の得意な治療法でも良いと思います。まずは、自分のまわりにいる理学療法士の中で「この分野であれば自分が1番わかっている！」という分野を作ることを目指してみましょう。そのレベルに達することで、他の理学療法士よりも1つ突出した存在となり、その職場内だけでも自分の価値は高まっていき、「この疾患ならあの人に聞いてみよう。」というように、理学療法士として重宝される存在となります。

また、認定理学療法士や専門理学療法士などといった理学療法士協会に認定された肩書きを取得するように努力するのも良いと思います。こうすると、職場内でその分野を任されやすいのはもちろん、転職したときにも「この分野で特に頑張っている理学療法士なのか。」というような理解を得られ、他の理学療法士より突出しており有利となります。

他と異なる分野で強みを作る

理学療法士として、疾患や治療法で得意な分野を作ることはとても重要です。その一方で、他と異なる分野で強みを作っていくというのも1つの方法です。「理学療法士×○○」というような表現をされることが多く、このかけ算を他の人と違う分野で作り出せると理学療法士としての価値も上がります。例えば、理学療法士×鍼灸師、理学療法士×カウンセラーなど理学療法としてのアプローチだけではなく、他の職種からのアプローチを行うことで多様性のある人材であることをアピールできます。そのような人材は転職でも有利であったり、病院や施設勤務以外の働き方を見い出せたりといった可能性があり、理学療法士としての価値も高くなります。

時代の変化を汲み取る

理学療法士は厚生労働省の管轄であり、理学療法士に関係する細々とした情報の改定などは定期的に行われています。身近な例を挙げると、診療報酬や介護保険の内容などが挙げられます。

そのため、社会的に今どんな人材が必要とされているのか、理学療法士は今後どのような立場になっていくことが予測されるのかを理解することも重要です。時代のニーズに合った働き方や理学療法士としてのあり方を考えることで、日々の仕事を広い視野を持って行うことができます。理学療法士の仕事に関わる情報は細かにチェックしておくことで、的確なアドバイスにも繋がります。

また、理学療法士のリハビリテーションの内容や治療法は、20年前は主流だった考え方が、今では間違った考え方とされていたり、今までと打って変わった新しい治療法が主流となったりといったことが、医療の進歩とともに大きく変化してきています。いつまでも昔の治療法や経験などを頼りにしていては時代遅れの理学療法士となってしまいます。もちろん、経験が重要である場面も多々ありますが、医療ではエビデンスが重要になります。そのため、エビデンスの高い治療法を学習し、時代の流れに沿った最先端の治療を患者様に提供することも、理学療法士として長く勤めて行くために必要なことです。

新しい働き方を開拓

理学療法士は病院や施設で働くことの多い職業です。しかし、先述したように理学療法士の働き方も多様化が進み、病院や施設のみではなく、様々な場面で活躍する理学療法士が増えてきています。もちろん、理学療法士として病院や施設で勤務して、目の前の患者様のためにリハビリテーションを実施することは重要なことです。

その一方で、多様化する理学療法士という職業で「なにか自分にも他にできることがないか。」と可能性を見出していくことは必要です。他にも自分に合った理学療法士としての働き方を見つけられる場合もあります。転職するとなると、リスクも伴いますが、自分の好きな働き方をするというのも良いかもしれません。

社会人としての礼儀

理学療法士として長く活躍したり、職場内や地域で必要な人材になったりするためには、上述したことを努力し、自分の理学療法士としての価値を高めていく必要があります。しかし、それらができていたとしても社会人として礼儀のない人間であればそれは台無しです。礼儀のない人間はいくら理学療法士として素晴らしい人材であっても、信用できない人間として見られてしまいます。
理学療法士は医療業界で働いているため、一般的な社会人とはやや異なります。そのため、一般的な社会人としてのマナーを身につけておくことも必要なことです。

まとめ

今回は理学療法士の将来求められる役割と長く活躍するために必要なことについて執筆しました。理学療法士は将来も今と同じような働き方で、高齢者の多い日本社会で役立つ存在となることが予測されます。しかし、その一方で、多様化する働き方の中で、新しい働き方を見出し、社会に貢献するという役割も出てきています。そのため、理学療法士として長く血訳していけるように自己研鑽に努め、自分の価値を高めながら日々の業務を行っていくことが必要です。

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